2010年11月22日

ステップバイステップ(1)目的と手段を決めよう

さていよいよ制作のスタートです。
と言っても、いきなりカメラを回しはじめる訳では有りません。
当たり前のことですが、まずはどんな映画をどうやって撮るのかを決めていかなければなりません。
 

目的地と移動手段

よく、何かを成し遂げる工程を山登りに例えることが有ります。映画も登山のようなものですが、なんとなく辛いイメージがあるので例えを変えます。

今回は、旅行に例えることにします。

たいていの場合、まず目的地を決めて、それからそこへ行くための移動手段を決めます。
旅行では、ほとんどの場合が「今度の週末」、「来年のお正月休みで」など、いつから何日間の日程で行くか決まっていることが多いです。予算もだいたい限られていると思うので、自由に行き先を選んでいるように思っていても、おのずと制約のうちに目的地とそこへの移動手段が決まっていることになります。映画制作も同じです。


目的地を決める

今回の場合、国内旅行です。海外はダメです。
なぜかというと、『ゼロからの劇場映画制作講座!』だからです。
この連載記事の対象は映画を初めて作る“完全素人”のひとなので、旅行に例えると『はじめてのおつかい』と同じレベルということになります。ふつう、初めてひとりで出掛けるのに、海外旅行は選ばないと思います。

“劇場公開映画”とひと口に言っても、上は全国数百ヶ所の劇場で公開される大規模な作品から、下は自主上映と同じような規模の作品まで、様々なクラスがあります。その多くは、作りはじめる前にもう公開規模が決まっています。それはさきほどの例えで言うと、旅行の規模が新婚旅行だったり修学旅行だったりするのと一緒で、一定のパターンに基づいて予算が組まれ、製作者が集まって企画され、制作されるからです。

今回目標とするのは、単館系の劇場で公開、そしてDVDの全国発売です。つまり旅行で例えると海外ではなく国内のわりと近場ということになります。
国内旅行だからといって舐めて掛かってはいけません。もしもその移動手段を「徒歩のみで」と限定されたら、その大変さや掛かる時間は海外旅行よりもはるかに大きいものになるからです。
そしてこれからやろうとしていることは、実はそれに等しいことかもしれないのです。


どうやって行く?

目的地を適切に決めたところで、次に移動手段を考え、同時にルートを選びます。
今回の連載記事では「出来る限りスムーズに劇場映画を作る」ということなのでなるべく確実で速い乗り物に乗りたいところです。
スピードなら新幹線や飛行機が速いですが、当然チケット代はかさむ訳です。これは映画に置き換えると当然、予算のことを表します。

映画制作において、新幹線や飛行機の旅行に相当するチケット代は、だいたい10億円以上と思ってください。それくらいの制作費を用意できるかたは、そのお金と企画を製作会社に持ち込んで、さっさと映画を作ってください。好きな役者さんを指名すれば、もしかしたら叶うかもしれません。制作過程も、たまに高見の見物に行くだけでOKです。うまく行けば数ヶ月後には完成した試写を一番に観ることが出来て、1年後には全国の劇場で同時に劇場公開されていることでしょう。

ただ、そんな大金を簡単に用意できるひとは滅多に居ないし、居たとしてもこのようなブログの連載記事など目に留めないはずです。

それに、新幹線や飛行機で旅行に行くのは、その間にあるたくさんの観光名所や風光明媚な地を知らずに飛び越えてしまう、有る意味でとてももったいない旅行の方法とも言えるのです。仕事の出張旅行であれば別ですが、せっかく映画の世界を旅するのに、いきなり最初からそんな味気のない旅で済ませてしまうのはおすすめ出来ません。「苦労は買ってでもしろ」と言われますが、新幹線や飛行機に“乗れない”のではなくて、あえて“乗らない”旅をしてみるのはどうでしょうか?


地道にゆくのも悪くない

さて、予算が数百万円、数十万円、あるいは全く無い、という方々にとっては、この旅行は自転車または徒歩による旅ということになります。大変な感じがして挑戦をやめようと思ったかたも多いかもしれませんが、進んでさえいればいつかは必ず到着するというイメージは持つことが出来ると思います。

実際に、「徒歩で○○まで行く」と言い出すと、周囲の人からかなりの割合で馬鹿にされます。ただ、実際に歩きはじめるとその姿を気の毒に思うのか、応援してくれるひともちらほら現れ始めます。そしてボロボロになってもがんばって歩き続けているのを見ると、まるで自分の分身が戦っているかのように感情移入して励ましてくれるひとも出てきます。人間というのは本当に不思議な生き物だと思います。目的地に達するころには誰だか知らないようなひとまで一緒に応援しながら歩いてゴールをともにしてくれたりもします。「24時間テレビか」と思います。


挑戦することに意味がある?

今回は目標を「劇場公開映画を作ること」と設定していますので、ゴールしなくては意味がありません。失敗です。無理して遠くにゴールを設定せず、特別に険しいルートを選ばないことが何よりも重要だと考えます。

話を映画のことに戻すと、劇場公開出来る作品とは、劇場主の方々や配給会社の方々が喜んで引き受けてくれる作品です。つまり、劇場や配給会社の利益になるか、少なくとも不利益にならない作品で有る必要があります。ゴールが劇場公開映画なら、その条件に当てはまる作品にすることが必要になります。そしてこのゴール地点から逆算してそこへ至るルートを決めれば良い訳ですので話は簡単です。


できあがりのイメージ

では、劇場や配給会社の利益になる作品とはどんなものでしょうか。それは、実際に劇場で掛かっている映画を観て確かめてください。それらをなるべく沢山観て、制作者の目線から徹底的に分析することが大切だと思います。日本で撮るのですから、洋画ではなく邦画を観てください。時代や国、映画を取り巻く社会情勢が変わらなければ、上映されている映画の質と内容をよく観察して、同程度のものに仕上げれば、劇場公開が可能ということになります。

もし普段通い詰めて居て憧れている、自分の作品を公開する目標となるような劇場があるなら、そこで上映されている作品をとにかくよく観てください。役者さんは皆有名ですか?原作が漫画や小説ですか?主に何才くらいのひとに向けられた作品ですか?男性客と女性客どちらが多いですか?チラシの写真はどんなでキャッチコピーはどんなものですか?すべてメモして整理してください。たとえその劇場が無理でも、それに近いタイプの劇場で自分の作品を掛けてもらうことが出来るかもしれません。
また、特にそういった目標とする劇場が無いなら、自分の作品のタイプに合った劇場や配給会社を、完成が近づいた段階で検討するという手もあります。行き当たりばったりでも、目的地に着けばよしとします。

前回の記事にも書いた通り、自分の中に「表現したいものがある」という事が映画制作を成し遂げる上でとても大切なのですが、その事と現在実際に劇場で上映されている映画を目標にすることを、混同しないようにしていただきたいと思います。これは非常に重要です。

「表現したいもの」をしっかりと表現したうえで、なおかつ市場原理に基づいて経営されている劇場に利益をもたらすことが出来る作品を作る、というのが、この『ゼロからの劇場映画制作講座!』の最終目標で有るということが、おわかりいただけたでしょうか。


どうして「劇場公開」?

なお、単館系の劇場だけを目指して、メジャー系を目指さないのはせっかく映画を作るのに観客に観てもらえる機会が少なくてなってもったいない、と思われるかたもいらっしゃるかと思いますが、劇場公開は観客数よりも「劇場公開作品」であること自体に意味があると考えてください。メジャー系で掛かる作品には企画の段階で、それなりの役者さんが出ていたり、原作がヒットしていたり、というレベルの高い条件をクリアする必要があります。冒頭の例えで言えば海外旅行ですので、歩いて行くには遠すぎます。その点、歩きでなんとか辿り着ける単館系では、作品の本質をよく見抜いてその劇場なりのカラーやオリジナリティーに基づいた番組構成をしたり、まだ知られていない作品を積極的に後押しして世に紹介しようという映画人としての良心を持った劇場主のかたが多いように思います。掛けてもらえるチャンスが有るのです。

では逆に、なぜ宣伝費用など非常にお金がかかる「劇場公開」を目指すのかについてですが、「劇場公開作品」であることは公開後にDVD化したりその他の方法で作品を広めていくときに有利になりやすいという理由があります。つまり最終的によりたくさんの人に作品を観て貰うためです。
もちろんビデオ映画として最初からDVDで世に出すという、費用対観客数の観点から非常に効率的な方法も選択肢としては有るのですが、そこは劇場のスクリーンに自分の作品を掛けてみたい!という情熱と、今回の連載記事のタイトル『ゼロからの劇場映画制作講座!』に免じて、納得して貰えたらと思います。


映画祭を狙いたい

もう一つ、映画祭で賞を獲ることを第一目標にしたいというひともいるでしょう。でも今回の連載記事では、それを主眼とした作品を目指しません。
たくさんの方々がPFFなど有名な映画祭を目指して自主映画を作っておられますが、そのため非常に受賞確立が低く、また応募から結果発表までの期間も長くてその間に集まったスタッフ達の熱も冷めてしまいます。映画は、なるべく熱い内に劇場に掛けなくてはいけません。実際に沢山の作品が映画祭に落選してそのまま日の目を見ずに眠っているのを知っています。映画祭の選考委員の方々はプロなのですばらしい選別力を持っていますが、そのようなプロの方々だけに作品の運命を委ねてしまうのは、制作者としてはすこし無責任のような気もします。制作者は、基本的に素人の観客のみなさんに何かを伝えたくて映画を作るのですから、この連載記事では手段を選ばず、可能な限り人目に触れるような方法を探すことを選びます。


話がだいぶ逸れましたが、今後はこの「ステップバイステップ」のカテゴリーにて制作過程に沿った内容の記事を易しくざっくりと、そして“企画編”、“機材編”、“撮影編”など分野ごとに特化したちょっとマニアックな記事をそれぞれ個別のカテゴリーに、並行して掲載していきたいと思います。


http://empty-blue.com




posted by 帆根川 廣 at 20:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ゼロから:ステップバイステップ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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