2010年12月09日

機材編(3)EOS Kiss X4で劇場映画は撮れる?其の1

今回は、『機材編(1)いちばん手軽なEOSムービー』で紹介したCanonのデジタル一眼レフカメラ EOSシリーズのなかで最も手軽に本格的な動画撮影が出来る「EOS Kiss X4」を使って、はたしてほんとうに劇場映画を撮影出来るのか、実際にテスト撮影をしてみた結果を踏まえて紹介していきます。

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撮ってみた

ビデオカメラの評価といえば、個人的な経験から「暗い場所」「動きがある」「強い光がある」場面を撮れば、だいたいそのカメラの持っている能力がわかるような気がしています。もちろん機材の専門家であればもっといろいろな観点から客観的にテストをする必要がありますが、そういったテストはAV Wacthさんはじめ、他のレビューサイトさんにお任せするとして、今回は「EOS Kiss X4で劇場映画が撮れるの?」という観点だけから検証して、その結果を見て独断で感想を記していきます。その点、ご了承ください。

さて、6万円弱という価格(ボディーのみ、2010年12月現在、ネット通販価格)のEOS Kiss X4でほんとうに劇場映画が撮れるとしたら、これは驚異的な事実です。今回のテストでは、上記の条件をいっぺんに満たす場面、「夜の道路で車の後部にカメラを取り付けて走行し、後続の車を撮る」という、映画『エンプティー・ブルー』で頻繁に採用したショットを再現しました。

実際に撮影した映像は↓をご覧ください。

また、このショットが映画の中でどのように使われているかや、SONYのHDVカメラHDR-FX1の映像と比較してみたいかたは『エンプティー・ブルー』のDVDでお確かめください。


※画質はオリジナルと比べて劣化があります。

まず「EOS Kiss X4」の設定ですが、今回の使用レンズは純正レンズキットのズームレンズ「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS」で、20mm・絞り F4前後・シャッタースピード 30・ISO感度設定 800・ホワイトバランス AUTO での撮影としました。
その他の設定は、手ぶれ補正 あり、オートライティングオプティマイザー OFF、高輝度側・階調優先 OFF、ピクチャースタイル スタンダード。フォーカスはマニュアルフォーカスで、車の前端から画面奥までの範囲に合うように調整しています。

撮影した映像を見てまず驚いたのは、暗部のノイズの少なさです。そして、非常に強い(肉眼で見るとまぶしくて直視出来ない)ヘッドライトの明りをまともに撮っている割には、わずかなレンズフレア(レンズ内での光の乱反射)が確認出来るだけで目障りな映像の乱れがありません。
ハイライト部分の輪郭の切れもよいです。
非常に早く流れていく画面周辺部分の景色も、ブロックノイズ(デジタル圧縮特有の映像の乱れ)が目立たず、この暗さではほとんど完璧といってよい映像を作っているように見えます。

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※画面左下部分を原寸×2倍に拡大

手ぶれ補正も、細かな振動をそこそこ吸収してくれている感じがあります。一般のビデオカメラと同等の効き具合という印象です。

初めてのテストだったので、ISO感度設定を800と控えめにしましたが、1600でももしかしたら使える映像になったかもしれないと感じています。(通常、カメラのISO感度設定を上げると明るい画面になりますがノイズの量が増えて画質が低下する傾向があります。逆にISO感度設定を下げると画面が暗くなります。)
次回、機会があれば暗い場面でISO感度いくつまで映画撮影において使用可能か、実際に撮影して確かめてみたいと思います。

なお、映画撮影ではカメラの設定はフォーカスも含めてすべて「マニュアル」が基本となりますので、既にデジタル一眼レフカメラを持っていてヤル気満々のかたは、いまから「マニュアル」撮影に慣れておいてください。


結論。

今回のテスト環境では、個人的な評価として、充分に劇場映画で使用出来るレベルの画質が得られたという結論に達しました。


ところで、EOS Kiss X4をはじめて本格的に使ってみて、一点気になったことがありました。それは、撮影時、フォーカスや画質を正確に確認するためにカメラのビデオ出力端子から大きめの外部モニターに映像を出力しようとして接続ケーブルのコネクタを繋げると、カメラ本体の液晶モニターの表示が消えてしまうことです。これではカメラ本体のみでの撮影が出来ません。

撮影現場では、カメラマンが撮影中に観るカメラ本体のモニター画面のほかに、監督やプロデューサーが離れた場所で同時に撮影中の映像を確認する必要がある場合があります。このカメラでは、モニター出力をすると撮影が出来ませんので、特別にカメラマン用とほかのひとが観るためのモニターに分岐して、2つのモニターに接続し、その1つをカメラ本体に取り付けるという、大掛かりな環境の改良が必要になってしまいます。この機材をすべて合わせると、EOS Kiss X4の本体があと4,5個買える値段になります。せっかくローコストな制作環境が整いそうなのに、なんだか残念な感じがします。

ただ、今回『ゼロからの劇場映画制作講座!』では、とにかく小規模での制作環境にターゲットを絞って記事を書いていますので、撮影映像の確認は同時に行わず、ショットごとに「撮影→チェック→撮影…のような手順で行う」ことで対応することをおすすめしたいと思います。この撮影スタイルにも、「監督がショットごとに考える時間的余裕が生じる」「役者さんやスタッフがひと息つける」などいろいろな利点があります。

さて、先日『機材編(1)いちばん手軽なEOSムービー』の記事を書いてみて、非常に沢山のアクセスを頂いたことに驚きました。機材自体の性能や機能への感心の多さと、劇場映画を作ることへの興味。沢山の方々が、もしも可能であれば劇場映画を撮ってみたいと考えていらっしゃる証しではないかと思います。

機材マニアのかたが、よい機材を手に入れたものの、その使い道があまりにも平凡で退屈している、という話もよく聞かれます。僕としては、「手元によい機材があるから映画作りに挑戦してみる」というアプローチがあってもよいと思います。よい機材は、制作意欲を増幅させてくれます。それで、今まで映画に興味が無かったかたが映画に親しんでいただければ、映画の裾野は更に広がり、ひいては日本の映画界全体としての盛り上がりも確実に期待出来ます。その中で既成の枠にとらわれない新しい才能を持った制作者が次々とあらわれる可能性も、一層高まってゆくのではないでしょうか。

ただ、映画制作の世界はとても特殊な一面を持っています。機材から入って映画制作をはじめるひとにとっても、なるべくそういった部分でつまずいて失敗することがなく、スムーズに楽しく制作を進めていただけるように、今後「ステップバイステップ」カテゴリー内の記事では具体的な制作の流れや注意点などをわかりやすく書いていきたいと思います。ぜひ参考にしていただきたいです。

さて、次回はこのカメラで、映画の神髄「人物」の撮影に挑戦してみる予定です。EOSムービーの入門機がいったいどんな魅力的な映像を作り出してくれるのか。ぜひ、おたのしみに。




posted by 帆根川 廣 at 03:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ゼロから:機材編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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