2010年12月11日

機材編(4)EOS Kiss X4で劇場映画は撮れる?其の2

前回に引き続き、EOSムービーの入門機「EOS Kiss X4」で劇場映画は撮れるのか?を、独断で検証していきます。
今回は「EOS Kiss X4」を使って、初めて人物を撮ってみました。

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一眼ムービーがスゴイわけ

その前に、どうして今、EOSムービーのようなデジタル一眼レフカメラが映画制作の世界でもてはやされているのでしょうか。簡単に説明したいと思います。

デジタル一眼レフカメラはそもそも、「撮像素子」と呼ばれる旧来のカメラで言うところの「フィルム」に相当する電子部品の大きさが、一般的なビデオカメラよりも大きいという特長があります。これは元々フィルムを使っていた一眼レフカメラをデジタルに置き換えるにあたって、撮像素子もフィルムと同じ大きさのほうが、フィルムカメラと同じレンズが使えるなどの理由で都合が良かったからだと思います。そしてその大きな撮像素子を使って動画を撮れるEOSムービーが登場しました。

35mmフィルムと同じサイズの撮像素子を採用する「EOS 5D markII」などのカメラはもとより、「EOS Kiss X4」」「EOS 60D」「EOS 7D」などに採用されているAPS-Cサイズと呼ばれる35mmフィルムより小さめのフィルムと同じサイズの撮像素子でも、業務用ビデオカメラの撮像素子のサイズと比べると、数倍の大きさにもなるのです。
撮像素子のサイズが大きいと光を捉える面積が広いので、同じ明るさの環境ではより明るく色彩に富んだ映像が撮影出来ることになります。また、精細感のある映像を得られ易くなります。
厳密に言えば面積だけで比べるのは正しくありませんが、単純に「大きいほうがよい」としておいたほうが覚えやすいと思うのでここではそうしておきます。

撮像素子の大きさが影響するのは、明るさや色乗りの良さ、精細感だけでなく、映画制作の上で重要なもうひとつの要素があります。それが今回のテストで確かめたかった最大のポイント、「ボケ」表現です。

カメラには「被写界深度」という要素があります。「ボケ」はこれに関連するのですが、ここで正確な原理を説明するにはスペースが足りないので簡単に済ませます。撮影したときにフォーカス(ピント)が合う範囲のことです。詳しくはコチラで→ Wikipedia
一般のビデオカメラ、たとえば僕が『エンプティー・ブルー』で使用したSONY HDR FX-1などでは、被写界深度が深く、手前のものも、奥にあるものも、一辺倒にフォーカスがあってしまいがちです。ニュース映像のような、趣の無い画面になってしまうため、ポスプロ(Post-Production=撮影後の作業)の段階でデジタル処理を大きく加えて雰囲気を作り出すのにたいへんな苦労を強いられました。
撮像素子が大きいと、この被写界深度を浅くすることが出来るので、フォーカスが合っている部分とボケている部分とを画面内に同居させることで、より深みのある映像を撮ることが出来るのです。

ご存知のように映画は元々、多くの場合35mmのフィルムを使って撮影されていましたので、いわゆる「映画らしい」映像のイメージはこの「ボケ」から来るところが大きいと思います。

「撮像素子の大きさが映画用フィルムカメラに近い。」
このことが「映画らしい」映像を撮る上で非常に効いてくる訳です。

(厳密には映画用フィルムカメラは縦に、写真用フィルムカメラは横にフィルムを送って使用する為、同じ35mm幅のフィルムでも撮像面積は異なります。)

そして映画用フィルムカメラが非常に高価で撮影には複数の専門家を必要とする上に撮影時間に応じてフィルム代や現像代が掛かるのに比べ、デジタル一眼レフによる撮影は非常に低コストで、映画用フィルムカメラに近い「映画らしい」映像を手軽に撮影出来ると言えるのです。一眼ムービーがスゴイとされる理由をご理解頂けたでしょうか。

他にもデジタル一眼レフカメラが持っている利点として、簡単にレンズを交換出来ることがあげられます。制作を進める上で、この事は表現の幅を広げてくれると思います。交換用レンズはビデオカメラ用・映画カメラ用ともに非常に高価ですが、一眼レフカメラ用のレンズは沢山の種類が一般向けに販売されています。もちろん、その必要が無ければ最初から付いている純正レンズだけを使って映画を撮影することも出来ます。


撮ってみた

前置きが長くなりましたが、実際に撮影した映像をご覧ください。今回は簡単なカット編集もしてプロモーションムービーに仕立ててみましたが、もちろん映像自体に色補正やフィルターなどは一切使っていません。カメラで撮ったままの映像です。手ぶれや白とび、途中でシャッタースピードを変えている箇所などがありますが、初めて使うカメラでのテストということで、ご容赦ください。



※画質はオリジナルと比べて劣化があります。

さてカメラの設定は、絞り F1.4・シャッタースピード 1/30〜1/40・ISO感度設定 800・ホワイトバランス AUTO で撮影しました。ピクチャースタイルはスタンダードとモノクロを使用、オートライティングオプティマイザー OFF、高輝度側・階調優先 OFF、マニュアルフォーカスです。
レンズはCanon EF レンズ 50mm F1.4 の単焦点レンズを使用しました。このレンズに手ぶれ補正機能はありません。

自宅のHDモニターでチェックすると、ファミレスで会話をしながら片手間で撮ったとは思えないレベルの映像になっていると感じました。非常に色乗りがよく、精細感が有り、肌のハイライトのなかにもしっかり諧調と色情報が残っているのがデータからも確認出来ました。
また最大の関心であった「ボケ」の印象もとても良いです。
手前にグラスを置き、グラス越しの表情を狙っていますが、ボケ過ぎていてグラスが置いてあることすらわかりません。まさにボケボケの映像が撮れるカメラとレンズの組み合わせといえます。

明るい単焦点レンズを使って絞り開放で撮っている為、非常にフォーカス(ピント)合わせが難しいのですが、慣れてしまえば問題無いレベルだと思いました。ただフォーカス調整はレンズによってリングの操作性が異なる為、買う前にチェックが必要です。純正レンズキットのレンズのフォーカスリングは、けっして操作性が良いとは言えませんでした。また、調整時にフォーカスリングを回すと、どうしてもカメラも一緒に動いて映像がブレてしまうため、手持ち撮影をする場合には手ぶれ補正機能があるレンズを選んだほうがよいと思います。

カメラ本体のモニターは、撮影中の細かなフォーカスの調整に充分使える解像度を持っていました。ただ屋外の明るい場所では映像が見づらいため、なんらかの方法で補助する必要がありそうです。この辺りは他の一眼ムービーカメラも同様だと思います。(ミラーレス一眼のPanasonic DMC-GH2等では、電子式ビューファインダーが非常に見やすいという特長がありますが、正確なテストをしていないので機会があれば書きたいと思います。)

ここでお断りしておきますが、今回はテストの主要なテーマが「ボケ」・「ボケ味」であったため、なんだか「ボケ」にばかり焦点を当てた記事になっていますが、けっして「ボケ」ていれば映画らしく見えるという訳ではありませんし、そもそも「映画らしい」という意味もよくわかりません。よって、このような表現方法を多用することをお勧めしている訳でもありません。「まず表現したいものがあって、それに合わせて最適な表現方法を考える」というのが、制作の基本だと思います。ただ、選択肢としてこういった表現も選べることには、素直に魅力を感じます。


脱線。

今回撮った映像、ファミレスでのオフショットですが、背景が盛大にボケていてどんな場所で撮っているかほとんどわからない程だと思います。
よく、デジタル一眼レフカメラを「ゲリラカメラ」と揶揄するのを聞いたことがありましたが、なるほどと思います。単に小さいから撮影しているのが目立たない=ゲリラ撮影向き、というだけではなく、実際に撮った映像を観ても何処でどのように撮ったか分からないように撮ることが可能です。
これは、セットを準備出来ない場合や時間的制約で撮影を早く切り上げたい場合などに、役者さん以外の背景を誤魔化すことが簡単に出来ることにつながります。困った時の「逃げ」としても使えるということです。

そして、編集にあたってパソコンに取り込む時の話です。

うちのMacでは、USBポートにカメラを接続すると、なんとiPhotoが立ち上がります。そして写真と同じ様に読み込んでリストに表示してくれました。プレビューも出来ます。特に何かのソフトをインストールするといった手間もありません。
元々EOSムービーのファイル形式はQuickTimeなので、Macとの相性はとても良いと言えます。Final Cut Proで編集する際には、AppleProres422の圧縮に変換してから読み込むと、非常にサクサクと扱うことが出来ました。うちのような古いMacの環境では、この形式に変換してから編集するほうが無難だと感じました。
また、DVDに変換したときの感じも良好でした。撮影から視聴までのひと通りの流れがカメラとMac一台で非常にスムーズに実現可能です。


そんな訳で、今回のテストも個人的に非常に興味深く、楽しいものになりました。

2年くらい前にデジタル一眼ムービーが登場し始めたころ、雑誌やWebでしきりに取り上げられたことを、今頃になってようやく体験することが出来た訳ですが、これはもしかしたら映画界に巻き起こった革命的な出来事なのかも知れないと、本気で感じました。そして誰もが簡単に「映画的」映像を撮影出来るようになった今こそ、「歌」や「絵画」と同様、本来的な意味での表現方法のひとつとしての「映画」が、その内容を楽しまれ、評価される時代が来たのでは無いかと感じました。


結論。

そして今回の結論も前回と同様、「EOS Kiss X4」は、充分に劇場映画を撮影出来るだけの能力を持っている、と実感しました。もちろんいろいろな工夫が必要なこともわかってきましたので、今後の記事で取り上げていたいと思います。




 
posted by 帆根川 廣 at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ゼロから:機材編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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