2011年03月01日

機材編(5)EOS Kiss X4で劇場映画は撮れる?其の3

さて、キャノンのデジタル一眼レフカメラ入門機「EOS Kiss X4」で劇場映画が撮れるのかを検証するシリーズです。
久しぶりの今回は、実際に私・帆根川が練習用のショートムービーを撮影してみた結果を踏まえ、EOSムービーをはじめとしたデジタル一眼レフカメラによる映画撮影の問題点を中心に書いてみたいと思います。

EOSムービーのここがダメだ?
  
(1)画質・映像特性の問題点

zeroeiga_11022801.jpg
※モデル:手島実優さん(キャスティングお問い合わせはホリエージェンシー様まで)

さっそくですが今回撮らせていただいた映像のスクリーンショットから、まずは画質面で気付いたことを挙げていきます。

・偽色、モアレ
これらはEOSムービーをはじめ一眼ムービーが作る映像の問題点として代表的なものです。
偽色は、上の画像ではモデルさんが持っている写真機のレンズ部分に見られる、実際には存在しない色が描写されてしまう現象です。

モアレは、モデルさんの制服の細かな布地の模様から生じてしまっている、色付きの縞模様です。

これらは解像度の高い撮像素子と映像化の際の処理の関係で生じるものと思われます。そのため、特にEOSムービーに限った問題ではありませんが、これが思った以上に目立ってしまうことが、今回の撮影で非常に気になりました。


zeroeiga_11022802.jpg
※モアレと偽色部分の拡大写真。


・動体歪み
動体歪みは、一部のビデオカメラにも生じる特性で、主に車や電車など横方向に速く移動しているものを撮ると、それが菱形に歪んで映る現象のことです。
これはカメラが撮像素子から信号を読み取る際のスピードによる問題と思われます。

撮影前にこうしたものを撮らないように気をつけることでこの問題を防ぐことも出来ますが、基本的にはカメラの特性と思ってあきらめるしかありません。

また、これらの問題はポスプロ(撮影後の作業)で、ある程度までなら修正をして目立たなくすることも可能です。


(2)音声の録音処理の問題点

・音声レベルメーター表示
音声収録についても、必要不可欠といえる機能が備わっていません。
カメラ内蔵マイクはモノラルで、とてもこれだけで音響をカバーするには力不足ですので、外部音声入力端子を利用してマイクを接続することになりますが、収録中にリアルタイムで音声のレベルメーターを表示する機能(音の大きさの基準値を表示する機能)が利用出来ません。
これでは、本番中にどの程度の音量で音声が録音されているのか、基準値をオーバーしていないか、などをチェックすることが出来ません。また、録音している音声をモニタリング(ヘッドホンなどでリアルタイムに録音状況を確認する)ことが出来ません。

そのため、リニアPCMレコーダーなど、外部の録音機器にガンマイク等を繋いで、音だけを別に録音する必要があります。

ebb09013101.jpg
※今回使用したSONYリニアPCMレコーダー「PCM-D50

その際には、カメラと録音機器のタイミングを同期させるための基準をつくらなければ、編集ソフトで映像と音声を合わせる際に非常に苦労することになります。
そこで、カチンコ(映画撮影ではおなじみの「カチン」と音が出る道具)をカメラの録画と録音機器の録音をスタートした直後に鳴らして、そのタイミングを基準に映像と音声を編集ソフト上で同期させると、作業はとてもスムーズに進みます。
もちろん、撮影するテイクが少なければ、カチンコを用いずに「スタート」の声や役者さんの口の動きなどから音声を同期させることも可能ですが、時間と手間が掛かります。


(3)操作・運用上の問題点

・ピント合わせ
特に「EOS Kiss X4」純正レンズのフォーカスリングはけっして操作性のよいものではありません。微妙なピントの調整には慣れが必要と感じました。
また、近づいてくる・遠ざかっていく人や物を追うのは至難のワザと感じます。
「フォローフォーカス」というカメラに付加する機材を追加してこれに対処するケースも、特にプロの現場では見受けられます。
フォーカスが合っているか確認するための外部モニターの必要性についても後述します。

・ヒストグラム表示
映像が明るすぎないか、あるいは暗すぎないかを、カメラのモニターだけでチェックするのは至難のワザです。環境光が明るいか暗いかによって、モニターの見えかたは大きく変わってしまうからです。カメラに入力されている信号の大小を正確に把握する必要があります。このための機能がヒストグラム表示です。
「EOS Kiss X4」では、動画撮影モードでヒストグラムを表示することが出来ないようでした。(よく調べればその機能があるのかも知れません。)
そこで、動画撮影モードでシャッターボタンを押して静止画を撮影し、それを再生してDISP.ボタンを押すことで静止画のヒストグラムを表示するという方法で、絞りやシャッタースピード、ISO感度設定などが適切かを確かめることが出来ました。
さらに「オートライティングオプティマイザー」機能(カメラが自動で逆光時の白飛びや黒つぶれ、光量の過不足を判断して階調を補正してくれる機能)をオンにした場合は、この効き具合も静止画のヒストグラムを見ることで確認できます。この「オートライティングオプティマイザー」機能は使い方によっては非常に有効で、EOSムービーの魅力のひとつだと感じました。

・NDフィルター
昼間の屋外撮影など明るい場面で、絞りを開きたい場合(主に背景をぼかしたい場合など)には、光量が増えるためシャッタースピードを上げて光がカメラに入る量を相対的に減らしてあげる必要があります。シャッタースピードを上げすぎると、人物の動きなどがパラパラしてしまいぎこちない映像になります。そのため、画面を暗くするサングラスのような効果があるNDフィルターをレンズの前に装着する必要があります。使っているレンズのフィルター径に合ったものを用意して、常に持っていたほうが良いと思います。

・バッテリーの容量
今回練習用のショートフィルムの撮影では、3時間程度でバッテリーが切れました。
これでは本格的な撮影には通用しませんので、追加のバッテリーは必要不可欠です。

・外部モニター
前回も書きましたがHDMI端子から出力するとカメラ本体のモニターが消えます。
これでは撮影が出来ませんので、撮影映像のチェックが必要な場合には撮影後に外部モニターを繋いで、またはカメラのモニター自体で、チェックを行うことになります。

問題になるのはピント合わせです。
対象が固定ならば撮影前に合わせることで対処できます。EOSには映像を拡大してフォーカスを合わせ易くする便利な機能があります。
対象が移動する場合でカメラが固定なら、リハーサルの時に役者さんに動いて貰い、ポイントとなる場所でピントを合わせ、そのときのリング位置を指で覚えるか、シールなどでマークを付けることで対処します。
手持ちや移動撮影を多様する場合には、SONY クリップオンモニター 「CLM-V55」のようなフォーカスアシスト機能(ピントが合っている部分の輪郭を着色して表示するなどして、ピント合わせを容易にしてくれる機能)のついた外部モニターの導入が必須です。

・記録メディアの信頼性
現場にノートパソコンなどを持ち込み、これと連携して、要バックアップです。


まとめ

実際に撮影を行なってみて、以上のような問題点が見つかりました。ただ、これらは一眼ムービーの持つ描画性能や、機能性・運用性のメリットに比べれば、取るに足らないことのように思います。
特に今回の連載で重要なポイントは、価格です。
安価な割に良好な画質が得られるという点においては、本当によい機材だと思います。
上記の欠点を補うための機材を揃えるとけっして安上がりとは言えませんが、必要に応じて少しずつ揃えていくやりかたもあります。
とにかく最初は、カメラ本体など最低限必要なものだけを揃えて、機材を身体の一部のように扱えるよう操作や運用に習熟することが大事だと思います。

現在「EOS Kiss X4」をお借りして撮影に使わせていただいている身としては、特にその必要性を強く感じました。


みんな同じ画にならないための雰囲気作り

実際に周囲を見渡すと、低予算作品では一部のプロによる劇場作品も含め「猫も杓子も一眼ムービー」という状況になっています。
テレビドラマの撮影にまで採用されているそうです。

それだけ一眼ムービーに優れた特性があることが証明されていると言えますが、その弊害も考えられます。
一番考えられるのは、素人が軽はずみに使うと、皆同じ様な雰囲気を持つ映像の作品になってしまうことです。

ですから作品の企画段階で、テーマや脚本に合わせたカメラワークや色彩設計をしっかりと検討したり、ポスプロ(撮影後の作業)段階でも、カラコレ(色補正)よりももっと踏み込んだ、積極的な色調の創作やフィルター処理による雰囲気作りが必要になってくるのではないかと思います。


以上、今回は実際に短編の撮影に1日運用してみて感じた問題点とその対策を、自分なりの観点から書いてみました。
参考にしていただきたいと思います。




 
posted by 帆根川 廣 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | ゼロから:機材編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自主制作のために「EOS Kiss X50」の導入を検討している者です。
ツイッターよりこちらのブログに初めておじゃましています。
とても参考になりました。

どうもありがとうございます。

音だけ別録したことがありますが、編集時、ほんと大変でした…
Posted by hori nariko at 2011年03月25日 21:00
hori narikoさんはじめまして。
コメントありがとうございます。

たしかX50は、フルHDではないモデルでしたね。
完全にノーマークでした。

僕はX5の方に興味が有ります。
X5のバリアングル液晶モニターは、映画撮影ではかなり重宝しそうです。

音の別録は、たしかに面倒ですね。
でもリニアPCMレコーダーが今や1万円以下でも買えてしまうなんて、
とても贅沢な時代だと思います。
役者さん一人に1個ずつ用意して、ピンマイクのかわりに仕込んで使うことだって可能です^^
Posted by 帆根川 廣 at 2011年03月25日 21:58
またまたコメントをすみません。

私、間違ってました。
X50ではなく、X5を検討していたのでした。
発売時期が近かったので勘違いをしていました(^^:
お恥ずかしい…

音の件、
リニアPCMレコーダーをピンマイクかわりに使用するという方法、
なるほどです。
どうもありがとうございます。
Posted by hori nariko at 2011年03月26日 11:21
スミマセン。
私も「X5」のことでした。
「X50」も新しく発売されるので勘違いをしておりました。
お恥ずかしい。

リニアPCMレコーダーをピンマイクがわりに使用するのは、
なるほどですね。
どうもありがとうございます。

こちらのブログは勉強になること満載なので、
これからもちょくちょくお邪魔するかと思います。

どうぞ宜しくお願いいたします。
Posted by hori nariko at 2011年03月29日 11:46
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